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九州城館探訪記 〜3日目、全国山城サミットin竹田を満喫の巻〜

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4時起床。まだ辺りは真っ暗だが、宿を出て一路、角牟礼城(つのむれじょう)に向かう。

 

美浜町のONさんや最近お城仲間になったMさんが「九州に行ったら角牟礼だけは見とけ」というので攻めることに。スケジュール的には今日の早朝しか空いてなかったので、暗いうちに麓まで移動して、駐車場で日の出を待ち、白々と夜が明けると同時にライトを片手に登り始めた。とにかく鹿が多く、道路ではバンビ2頭と並走。城内でも「ケーン、ケーン!」と鳴く鹿に何度驚かされたことか。

 

角牟礼城は国指定史跡で確かに立派な山城。主郭の大きさは特筆モノ。所々に織豊系の石垣が積んであるのだが、昨日の岡城を見てしまったので。。。訪城の順序が逆なら良かった。

 

 

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城内にはいろいろと整備の痕跡が。通路には整備道なのか、砕石が敷かれていたがこれには考えさせられた。砕石の粒が大きくて歩きづらいのだ。遺構の保護の為かもしれないが、無い方が歩きやすいかも。それと砕石の量。これは城にとって破却されて以来の大きなインパクトのはず。万が一、あとで取り除く事態になったら相当大変だろう。史跡は保全すべきだが、整備自体が将来の負荷にならないようにしたいと思った。

 

 

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下山後、角牟礼城の近くにある野田城を目指したのだが、場所がわからずあえなく断念。小さな城なのだが、周りを58本の竪堀が取り巻いている城なのだ。大きな城ばかり見ているので、スイーツ的な感じで訪城したかったので残念なり。

 

そんなこんなで早朝城攻めを終えるといい時間になってしまったので、慌てて竹田市に戻る。しかし、今日も濃い霧で視界が不良。大分に入ってから濃霧続きで少しうんざり。

 

 

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10時から商工会館でサミット総会が開かれた。今年も加盟自治体が増え、93団体143城となった。すっかり大きな協議会となった。議題としては来年度の開催地が栃木県佐野市(唐沢山城)に決まった。

 

この総会はもちろん大事なのだが、開催地の市長さんが議長を務める厳粛な雰囲気の総会では自由に意見を出すのは難しい。参加自治体の関係者がざっくばらんに話し合う場が別にあってもいいのではと思う。それぞれ知恵を絞って城を守り、工夫を凝らして城をPRしているのだから。

 

総会前に可児市さんがお揃いのベストを着ているので尋ねてみたら、企業からの協賛でベストを作成、しかも市内の城ごとにデザインが違う、しかもモンベルに直談判して協力をゲットという、あなた達本当に行政の職員ですか!?とツッコミを入れたくなるほどの素晴らしい取組みをされておられるのを知った。こんな事例を互いに見聞きすれば、明日への取組みに活かされるはずだ。

 

朝来市さんは事務局の運営だけでも色々ご苦労があると思うが、もう一歩、協議会活性化の為に前向きに手を打ってもいいのでは。アンケートをやれと意見をもらったのでやってみました、だけではちと寂しい気が。じゃあお前やれよと言われても立場的に無理なのだが、そこは山城のトップランナーとして他自治体を引っ張っていく気概で、何か改善策を期待したい。

 

 

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お昼は近くの文化財建造物の公民館にて、団子汁とお弁当を頂いた。ここでもやっぱりカボスと鳥の唐揚げが。この二つはマストなんだね。とにかくお腹がはちきれそう。

 

しかし、山城サミットは楽しい。何が楽しいかといえば、各自治体の担当者の皆さんと色々と情報交換ができるからだ。まるで年に一度の同級会に来ているような感覚だ。担当者の方から生の声を聞くのが一番勉強になるし、刺激&やる気をもらえる。「お!あの城はそんな事までやってんのか!うちも負けてられねーぞ」という具合だ。

 

 

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13時から竹田高校の体育館でサミットが開会。

500席ほどの席はほぼ埋まってしまうほどの盛況ぶり。

 

 

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会場の入り口付近は各自治体のブースがひしめく。

こちらは整然と並んだパンフ類が芸術的ですらある月山富田城さんのブース。

本当にこちらはいつも勉強熱心というか、取組み熱心で見習うことばかり。最近は城内の樹木を伐採して眺望を確保されたのだとか。MNKCさんと立ち話で色々と伺う。次から次へとやるべき事があるという雰囲気。こう言う活気あるブースを見ていると、元気と勇気がもらえる。

 

 

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こちらは日の出の勢いというか、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの可児市さんのブース。もはやサミットの台風の目的存在となっている感すらあります。スタッフも多いし活気がある。陣羽織も新調されたそうでキマってます。いろんなグッズが置いてありますが、どれもウルトラC的なやり方で作成されたそう。いつかじっくりお話を聞きたいものです。自分には、これからのサミット加盟自治体の未来へのヒントが詰まっているブースに写りました。

 

 

 
オープニングの阿鹿野獅子。
太鼓の音が迫力満点。
 
 
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北九州市立自然史・歴史博物館の中西義昌氏の解説で昨日の謎が解けた。もともと在地の武士は豊後武士団、南郡衆と呼ばれる人達で、一蓮托生という意識があり、家臣団も城主も一緒に城内に入ったので曲輪が広く、縄張りも大きい。つまり、城と城下を兼ねていたのであれだけの山上空間が必要だった。そして、豊後土着の勢力に対峙した上方からの外来勢力が、緊張と融合の末にできたのが岡城なのだと。

 

奈良大学教授 千田嘉博氏の講演も良かった。「石垣の際に立つと城の凄さよりも、生命の危険を感じます」などと独特のユーモアを交えての楽しいお話だったが、会場は少しスルー気味。岡城の魅力を活かすには、植生管理によって城としての顕在化を実現することや、VRなどバーチャルで城を体験する新しい手法の提言など示唆に富むものだった。

 

講演後、会場でもみくちゃになっておられたところ、ご挨拶に伺うと「増山城には3回行ったよ。今度また行くからいつでも呼んでください!」と仰ってくださった。先生、そんなこと言ったら本当に呼びますよ(笑)

 

 

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サミットの中で心に残ったのは中学生の発表。

口頭で城について説明した後、寸劇で歴史を紹介。ちょっとやそっとの準備でここまでは出来ないぞ。完成度が高いし、相当の下調べと練習を積んだものだと思われた。中学生の言葉で聞くと、妙な納得感もあったし、微笑ましいので見入ってしまうという交換もあった。

 

 

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岡城武者揃えのみなさんの発表も斬新。ムービーは手が込んでてとても良かったが、その後のスピーチ?も聞き応え満載。普段は勝手連として甲冑を着て城内を案内しているだそうだが、活動の苦労話(夏の暑さ、資金難、家族の冷たい目など)をユーモアを交えて話され、「お客さんに城下の店を訪ねて行って欲しいが、土日に開いている店がない」など全方位に対して自由に発言。肝を冷やした関係者もいたのでは?と思わざるを得ない貴重なスピーチだった。

 

 

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↑岡城の初源期の姿の復元図

 

とまあ、盛りだくさんの内容だった今回の山城サミット。

特に竹田市さんの力の入れように目を見張るばかりの内容だった。お城で太鼓のライブを行ったり、サミット専用のfacebookページを開設したり、サミットに合わせて二の丸の便益施設や駐車場や搦手の車道を整備したり、アトラクションに阿鹿野獅子、中学生の発表、城での火縄銃隊などなど一朝一夕で真似出来ないようなものばかり。2日間のサミットのために多くの方が情熱を傾けて、準備してこられたのだろうと思うと頭が下がる。竹田市の皆さん、ありがとうございました。素晴らしいホスピタリティでした。

 

来年は栃木県佐野市の唐沢山城。

各自治体の担当者の皆さんと再会を誓って会場を後にしたのでした。


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