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Channel: 学芸員の小部屋
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三河への文化財視察の旅 〜文化財行政の隠れた先進地を訪れるの巻〜

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1泊2日で三河方面へ文化財の視察に。

井波朝練に参加して40km走った後、速攻でシャワーを浴びて郷土資料館に直行し、文化財保護審議会委員の皆さんと一緒に車に乗って東海北陸道を一路南下。

 

本日の目的地は、愛知県安城市

砺波市と安城市は、災害時相互応援協定と市民交流協定を結ぶ間柄。これまで様々な交流が行われてきていたが、文化財的な交流は皆無。そこで新たなチャンネルを作るため、今回の視察先に決まった。それと、安城市歴史博物館や埋蔵文化財センターの動きを前々からチェックしていて、その活発な活動と充実した施設運営に注目していた。その秘密を探ることも今回の目的の一つだ。

 

 

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歴史博物館の館長さんの挨拶の後、館の概要説明や文化財保護行政についての説明があったのだが、こちらの処理能力が追いつかないほどの情報量に圧倒された。中でも心に残ったのは、「文化財保護の目指すもの」という市の姿勢。「なぜ文化財は大事なのか?」と聞かれた時に、明確に答えを持っている。なぜ文化財行政にこれだけの公金を注ぎ込むのかという自問自答の末に導き出されたものだという。

 

変に小難しくなく、スッと納得できる答え。

市内部での説明の際にこれを出したところ、高い評価を得たという。

 

また、指定文化財指定基準まで作成済みで目からウロコ。

 

 

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博物館はハコ自体が県立博物館並みの立派さだが、その運営体制の斬新さに驚かされた。学芸部門は市直営、普及啓発は指定管理者へ委託しているのだ。つまり、企画展や特別展や日々の調査研究業務は、市の学芸部門が行い、体験講座やイベント、エントランスホールでの様々な催しは指定管理者の運営共同体が担う。

 

まさにハイブリッドな運営体制なのだ。

 

 

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普通は指定管理者といえば館の活動の一切を請け負うパターンが多いと思う。それだと専門性・学術性を担保できないので、そこは市が担う。この制度の導入により、学芸以外に時間を取られることが少なくなり、特別展や企画展に注力できるようになったという。しかも指定管理者を導入することでイベントが多くなり、入館者数が一気に増えた。まさにWin-Winの関係。このような指定管理者の導入は市町村単位では全国でほとんど例がないという。安城市は28年度からこの制度を取り入れた。

 

 

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全国の文化財担当者、博物館の学芸員はその職掌以外の雑事に追われて、調査・研究・保護に時間が割けない状況だと思う。学芸員は「雑芸員」と自虐的に言ったりもする。その状況を知恵によって乗り越えようとしているのが安城市である。全国的にほとんどモデルケースが無い中、手探りではありながら明確なビジョンのもとに制度が設計された。

 

しかも運営共同体と市の学芸部門とは常にコミュニケーションを取っていて関係は良好だという。まさに先駆的な文化財行政を行なっているように自分の目には映った。

 

ハコ以上に中身が素晴らしい博物館なのである。

今後、安城市モデルが全国に広がっていく予感さえした。

 

 

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埋蔵文化財センターも見せてもらった。

民間導入はせず、すべて直営。しかもト◯タのお膝元なので、いまだに開発が多い。調査員も整理員も常にフル稼働だという。

 

 

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バックヤードもしっかり見せてもらった。

子どもたちが見学に来た時に見せる用の収蔵庫と、リアルの収蔵庫と2種類あるのがおもしろい。

 

 

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歴史博物館と埋蔵文化財センターでお腹いっぱい、時間も押し気味だったが、安城市の文化財も見ておかないといけない。まず、こちらからリクエストした二子古墳へ。こちらは4世紀後半の前方後方墳。墳丘がよく残り、見晴らしの良い素晴らしい古墳だ。

 

 

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この古墳は20数基の古墳で形成される古墳群の中にある。

ここに立てば、安城の地理的環境がよくわかる。

 

 

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次に、三河三ヶ寺の一つ、本證寺へ。

 

 

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本堂の修復具合を丹念にみる皆さん。

 

 

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本證寺は典型的な寺内町。

内堀はほぼ残っており、外堀のアウトラインは分かっている。

 

 

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18時までみっちり視察して、予定時間より大幅に遅れて三河安城駅前のホテルにチェックイン。夜は、おもてなし ふく井さんで、富山から来たと聞いて配慮して出された昆布〆や新鮮なお刺身、ふわっふわで上品なお味の天ぷら、最高に美味しい出汁に浸った煮魚と茶蕎麦、宮崎牛の焼肉、やさしいお味のお茶漬けなどなど、美味しくいただいた。

ODさんの提案で3分間スピーチを。

YSKGWさんは県外視察が一年で一番楽しみにしていること、UENさんは砺波市のこの活動が素晴らしいということ、ANNNさんは数年前に同じコースを見て回ったがメンバーが変わると全く違った視点で見られたということ、NSIさんは博物館の有舌尖頭器をもっと時間をかけて見たかったことと私(野原)の選定は視察先も食事の店もいつも的確だと褒めていただいたこと、ODさんは安城を見習って情報共有を進めるべきだということ、初参加のNKSMさんはバスの中での濃い会話が勉強になったことなどを話した。

ともあれ、濃密な視察1日目が終わろうとしている。

 


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