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Channel: 学芸員の小部屋
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近畿民具学会シンポ「民具で未来をひらく」に参加してきた。

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 今年3月に「砺波の生活・生産用具」が国の重要文化財に指定された。これまで50年かけて民具収集してきた成果の賜物だ。

しかし、何かが足りない。
1つは、これまで民具に関する学術的な調査研究をしてこなかったこと。民具収集の数だけは他に負けてないが、農具の変遷を考察した研究ノートひとつ無い。もう1つは、民具の活用をほとんどしてこなかったこと。

そういう事を考えていた時、たまたまSNSで見つけた近畿民具学会の記事が目に止まり、郷土資料館に「どう?行かない?」と促すと意外にも3人も参加したいと名乗り出たので、日帰り強行軍で大阪へ(昨日福井の山城攻めをやったばかりなのにな〜)。


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基調講演は熊本大学の岩崎竹彦氏。民具の学史を紐解かれたのだが、情報量が凄まじい。レジュメは18P、資料が4部。講談師のような流暢な語り口で、75分きっちりにまとめられた。民俗についての学術的な発表は初めてだったので、その内容に衝撃を受けた。考古とは発表形式が違うので斬新だったが、聴衆の理解度を高めようとする資料作りと話しぶりは参考になった。

午後からはたくさんの事例報告があった。民具を使った米作り体験だったり、祭礼における唐人装束の考証であったり、自治体編纂における民具の位置づけだったり、進化系アーカイブ&旅するミュージアムだったり、示唆に富む発表が多かった。


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中でも身近な話題で、だからこそ驚きを禁じ得なかったのが、宮元正博氏(池田市立歴史民俗資料館)の発表だった。まずは和装での登壇に驚かされた。学会での発表でここまでやるのか。発表では、小学校が資料館に見学に来ない原因を分析し、学校が来やすいようにFAXの申込み用紙を校長会で配ったり、トレーディングカード式の暮らしの道具カードを作ったり、出前授業の際に民具を持ち込んで説明を行い、先生からの意見を元に毎年ブラッシュアップしたり、生徒からの質問カード1000通以上にすべて返信したり、その熱量たるや凄まじいものがあった。とても簡単に真似できるものでは無いが、ここまで徹底して民具活用ができるのかと思わされた。埋文でここまでの活用は見たことがない。

民俗関係のアカデミックな集まりに初めて参加したのだが、発表者の熱意に打たれた。それぞれが民具を研究資料として向き合う反面、活用への方法をダイナミックに模索しているように映った。発表者は30-40代とお見受けする若い研究者も多く、これからの可能性が感じられた。これまで砺波の民具は井の中のカワズ状態だったかもしれないが、これを機にこのような民具研究者の方々との交わりの機会を設け、さらに前進できればと思うのであった。さて、どうなることやら。

いろんな思いが交錯するが、明日もあるので、パネルディスカッションの前に会場を後にした。

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